パソコンは趣味や仕事に欠かせない存在です。でも、単調な作業に時間を取られてしまうことも多いのではないでしょうか？
そんな時に役立つのが自作ツールの作成です。しかし、「Pythonを学んだけれど、どうやってツールを作ればいいのか分からない」という方も多いはず。
このブログでは、Pythonの知識を活かして、自分にとって本当に役立つツールを作る方法を詳しく解説しています。実例を交えながら、必要な手順や考え方、さまざまなライブラリの使い方についてもご紹介します。
これからPythonを始めたい方にも、すでに学び始めている方にも役立つ情報が満載です。Pythonで便利なツールを作ってみたいと思ったら、ぜひこのブログをチェックしてください！
はじめに
本ブログの目的と概要
このブログの目的は、趣味や仕事で日常的に行っているパソコンの単純作業を効率化・自動化するためのツール作成をサポートすることにあります。
具体的には、Pythonの基本文法は一通り理解しているものの、ツール作成の具体的な方法が分からない方や、日々の作業を効率化・自動化するためにPythonの学習を始めようとしている方を対象にしています。このブログを通じて、自作ツールの作成に必要な具体的な手順や実例を学び、実践的なスキルを身に付けることを目指しています。
本ブログで使用するツールの動作環境
本ブログで紹介するツールは、開発環境および実行環境をUSBにインストールし、任意のWindows 11 PCに接続してそのまま利用したり、USBの内容をPCにコピーして使用することを前提とした運用スタイルを想定しています。
必要なライブラリや開発ツールは、作成するツールの内容によって異なる場合があります。そのため、それぞれのタイミングで適宜紹介していきます。ただし、共通して必要となる内容は以下の通りです。
| 動作するOS | Windows11 |
|---|---|
| 開発言語 | Python 3.12.x |
| 開発ツール | Visual Studio Code （通称 VSCode） |
本ブログを活用する上で必要な知識
本ブログで取り上げている内容は、以下の知識を持つ方を対象としています。
プログラミングの実務経験は必要ありませんが、Pythonの基本的な文法を理解していること、そしてパソコンの基本操作が問題なく行えることが前提となります。
- 基本的なWindowsパソコンの操作ができる
- メモ帳やテキストエディタを使い、テキストファイルを作成できる
- バッチファイルの基礎的な知識を持っている
- コマンドプロンプトで簡単なコマンドを実行できる
- Pythonの基本文法を理解している（例：変数、データ型、基本的な制御構文など）
Pythonのプログラムは、一般的にコマンドプロンプトを通じて実行されることが多いため、本ブログで紹介するツールも、コマンドプロンプトでの実行を基本としています。
さらに、ツールをエクスプローラーからダブルクリックで起動したり、特定の時刻に自動実行させるには、テキストエディタの基本操作やバッチファイルに関する知識が必要となります。
Pythonの基本的な文法について、具体的な内容は下記の記事に記載しています。これらを全て理解しておく必要はありません。本ブログの記事を読み進める上で、必要に応じてご確認下さい。
プログラムの開発環境について
Pythonを活用してツールの作成や実行を行うためには、適切なPython開発環境を整えることが重要です。
Pythonの開発環境にはさまざまな選択肢がありますが、本ブログではWinPythonを採用しています。WinPythonは、Windows環境に最適化されたポータブルな開発・実行環境であり、USBメモリで持ち運びできるメリットがあります。
また、プログラムの編集やデバッグを効率的に行うために、Visual Studio Codeも併せて使用します。Visual Studio Codeは、軽量で多機能なエディタであり、Pythonの開発に最適化された数多くの拡張機能を利用することができます。
WinPythonのインストール方法
WinPythonは、Windows環境に最適化されたポータブル開発・実行環境として、次の特徴があります。
- 圧縮ファイルを解凍するだけでPythonの開発／実行環境が作成できる
- Windowsや既存のアプリへの影響を抑止できる
- USBにコピーして、他のPCで動作させることができる
- フォルダ丸ごとコピーするだけで、環境の複製やバックアップができる
- Pythonの複数バージョンの共存と、同時利用ができる
WinPythonの具体的なインストール方法と使い方は次の記事をご覧ください。
VSCodeのインストール方法と使い方
WinPython で作成した開発・実行環境に VSCodeをインストールします。詳細は次の記事をご覧ください。
更に詳しい使い方については@ITの「第1回 Visual Studio Codeでデバッグをするための基礎知識」が参考になります。
ffmpeg のインストール方法
動画や音声を扱ったツールを自作する場合、WinPython で作成した開発・実行環境に ffmpegをインストールします。詳細は「WinPythonに ffmpeg をインストールする」の記事をご覧ください。
ポータブル版 Git のインストール方法
画像のノイズ除去など、深層学習（ディープラーニング）を使ったツールを自作する場合、GitHubに公開されているプログラムやモデルファイルが必要となります。それらを簡単にローカルにダウンロードするため、ポータブル版のGitをWinPython で作成した開発・実行環境にインストールします。詳細は「WinPythonにGit Portable版をインストールする」の記事をご確認ください。
ツールの作り方
ツールの自作は、自分のニーズにぴったり合ったものを作れるだけでなく、プログラミングスキルを向上させる絶好の機会でもあります。ここでは、ツールを作るための基本的なステップを紹介します。
作りたいものを明確にする
まずは何を作りたいのかを明確にしましょう。これはツールの目的や機能を具体的にするための重要なステップです。次のような質問を自分に投げかけてみてください
- 何を解決したいのか？
- どのような機能が必要か？
- 誰が使うのか？
例：
「複数のCSVファイルを一つにまとめるツールを作りたい。」
プログラムの仕様を決める
次に、ツールの仕様を具体的に決めます。仕様とは、ツールが持つべき機能や動作の詳細です。これには以下が含まれます。
- 入力と出力の種類（CSV／テキストファイル、キーボード入力など）
- 必須な機能の列挙と、有れば嬉しい機能（オプション機能）の洗い出し
- 画面のデザイン（どんな画面で操作したいのか）
＜参考例＞
入力形式：複数のCSVファイル
出力形式：結合された一つのCSVファイル
必須機能：2ファイル目以降のヘッダは破棄する
マウスのドラッグ＆ドロップでファイル選択できる
オプション機能：
「２ファイル目以降のヘッダは破棄しない」スイッチを付ける
文字コードをUTF-8から Shift-JIS に変換できる
画面デザイン：
画面項目ごとの役割や動作をまとめた一覧表を作成する方法も効果的です。
プログラムの実現方法を考える
仕様が決まったら、それをどのように実現するかを考えます。ここでは、使用するライブラリやツールを選定します。また、必要に応じて実現可能性や技術的な課題、解決策も検討します。
＜参考例＞
使用ライブラリ：Tkinter（GUI作成用）、pandas（CSVの読み込み／書き出し）
技術的課題 ：巨大なCSVを結合する場合、メモリに収まらない。
課題への対策 ：結合対象のCSVが巨大な場合は仕方ないが、CSVの結合はメモリで行わず、
１ファイルづつ読み込んで出力ファイルにAppendすることで対応する。
プログラムの構成を考える
次に、プログラム全体の構成を考えます。
- プログラム全体をどのように分割するか（いくつのモジュールに分けるのか）
- 各モジュールの従属関係（どのモジュールがどのモジュールを呼ぶか）はどうするのか
- 各モジュールにはどのような処理を行わせるのか
- 各モジュールにはどのような名前を付けるのか
例えば、次のような図を書くと具体的なイメージがつかみやすくなります。
Pythonはモジュールごとにファイルを分けることが多いので、モジュール＝ファイルとして考えておきましょう。
具体的な処理手順を考える
次に、各機能の具体的な処理手順を考えます。
GUIを持つツールの場合は、画面の操作ごとに実行する処理を考えていきます。処理手順を図式化する方法としてフローチャートが有名ですが、単純に処理ごとに箱を書いていくだけでも構いません。
プログラムを作成する
ここまでの流れを進めれば、作成したいもののイメージが明確に固まっていることでしょう。次は、そのアイデアを実現するために、実際にプログラミングを行う段階です。
Pythonには非常に多くのライブラリが揃っており、それらを活用することで効率的かつ柔軟に開発を進めることができます。また、このブログで紹介している自作クラスや関数をうまく利用しながら、目的のプログラムを構築していきます。
修正しやすい自作ツール作成ポイント
プログラムは、単純に手順を順番に並べるだけでも作ることができますが、処理の量が増えるにつれて、全体が複雑になり、保守性や再利用性が低下する場合があります。
そこで、この章では、プログラムのメンテナンス性や拡張性を向上させるための基本的なポイントについて解説します。
これらを意識することで、後からの機能追加や修正が容易になり、より効率的な開発が可能となります。
このブログで紹介している自作ツールは、こうした考え方を取り入れて設計されています。
ソースコードの理解や開発のヒントとしてぜひお役立てください。
画面と処理の分離
一般的なアプリケーションや自作ツールでは、ユーザーが画面を操作することで、それに対応した処理が実行され、結果が画面上またはファイルに出力される構造がよく見られます。
この流れを一つの大規模なプログラムとして構築することも可能ですが、プログラムが複雑になるにつれて全体を把握しづらくなります。その結果、画面部分や処理部分の修正・改良が困難になり、一部の機能を他のツールで再利用するのも難しくなりがちです。
このような問題を避けるには、プログラムを適切に分割することが有効な方法です。例えば、機能ごとに分割したり、ユーザーインターフェースと処理ロジックを明確に区別して設計するアプローチが広く採用されています。
このブログで取り上げている自作ツールでは、このような設計の考え方に基づき、画面部分と処理部分を独立させ、それぞれを個別に開発する方法を推奨しています。そして実際にこの手法を活用することで、効率的で柔軟性の高いツール作りを実現しています。
画面と処理の連携
画面と処理を分けて個別に作成した場合、両者を連携させて１つのツールに仕上げる必要があります。画面と処理の連携にはいろいろな方法がありますが、本ブログでは単純に画面操作ごとに必要なクラスやメソッドを呼び出す方法を採用します。
部品化と再利用
例えば、「複数のCSVファイルを統合して一つのファイルにまとめるツール」と、「ExcelファイルをCSVに変換するツール」を自作する場合、「CSVの出力」という機能は共通して利用できるかもしれません。
共通して利用できる機能が思い浮かんだら、他のプログラムにも使いやすいように部品化しておくのがおすすめです。ここでいう部品化とは、クラスや関数に分けて作ることを指します。
関数化を行う際は、汎用性を意識した仕様を設計します。例えば、第一引数には出力ファイル名、第二引数にはCSVを格納するDataFrame、第三引数には文字コードなどを指定するようにし、その仕様に基づいて関数を作成します。
最初は難しいかもしれませんが、共通化を心掛けながらプログラムを作っていくことで、次第に効率的に作業を進めるコツがつかめると思います。
共通化は自作のプログラム資産を増やし、後々のツール制作の効率向上やメンテナンスの負担軽減につながります。ぜひ意識して取り組んでみてください。
本ブログで使っているGUIライブラリ
本ブログで紹介する自作ツールは、次のライブラリを使っています。ライブラリの概要や使い方については個別の記事があるので、そちらをご覧ください。
| 用途 | ライブラリ名 | 関連記事 |
|---|---|---|
| UI作成 | CustomTkinter | CustomTkinterによる画面作成のポイントをサンプル付きで紹介 |
自作ツール向けに簡単な画面がサクッと作れる自作ライブラリを「【CustomTkinter】テキスト記述でGUIを簡単作成するライブラリを紹介！」の記事で紹介しています。テキストボックスやコンボボックスなどのウィジェットをテキストファイルに記述するだけの手軽さなので、興味のある方はご覧ください。
自作ツールに欠かせないPythonライブラリの基礎知識
| カテゴリ | 概要 | 記事へのURL |
|---|---|---|
| ファイル／フォルダ | ファイル／フォルダのパス分解、結合 | ファイルパス／フォルダパス操作 |
| ファイル／フォルダ | 指定フォルダからファイル一覧取得 | ファイル名一覧の取得 |
| ファイル／フォルダ | フォルダコピー、移動、削除 | フォルダ操作 |
| データベース | SQLiteへの接続、検索、更新、削除 | SQLite基礎 |
| データベース | SQLite のメタデータ取得方法 | SQLite応用 |
| データベース | pandasからのSQLite の利用 | SQLite実用 |
| スクレイピング | スクレイピングが簡単になる自作クラスの紹介 | 便利なスクレイピング自作クラス |
| 可視化 | Matplotlibの使い方 | グラフ作成のポイント |
| 可視化 | グラフ描画が簡単になる自作クラスの紹介 | 便利なグラフ描画自作クラス |
本ブログで紹介する自作ツール一覧
本ブログで公開を予定している自作ツールの一覧です。優先順位と難易度を考慮して、随時作成していきます。
| ツール | 概要 | ユースケース | 優先順位 |
|---|---|---|---|
| プログラム・ランチャー | メニュー一覧から任意のプログラムを起動 | 自作ツールを簡単に呼び出して使えるようにしたい場合 | 1 |
| スクレイピングツール | ウェブから自動的にデータを収集 | 定期的にウェブデータを収集・更新したい場合 | 1 |
| データ可視化ツール | データをグラフで可視化 | データ分析結果を視覚的に示したい場合 | 1 |
| CSV結合ツール | 複数のCSVファイルを1つのCSVファイルに結合 | データ統合・分析のために複数のCSVをまとめたい場合 | 2 |
| CSV分割ツール | 大きなCSVファイルを複数の小さいCSVファイルに分割 | 大容量データを扱いやすくするために分割したい場合 | 5 |
| フォルダZip圧縮ツール | フォルダを丸ごとZip圧縮（AES暗号化対応） | フォルダを丸ごとZip圧縮したい場合 | 5 |
| Parquet⇔CSV相互変換ツール | ParquetとCSVのフォルダ一括相互変換 | フォルダ内ファイルをParquetとCSVの間で相互変換したい場合 | |
| 複数のCSVを１つのブックにまとめる | 複数のCSVファイルを1つのExcelブックにまとめる | 複数のCSVデータを一つのExcelブックで管理したい場合 | 2 |
| 複数のCSVを１つのシートにまとめる | 複数のCSVファイルを1つのExcelシートに統合 | データ統合・分析のためにCSVを1つのシートで管理したい場合 | 2 |
| Excelの各シートをCSVに変換 | Excelファイルの各シートを個別のCSVファイルに変換 | 大量のExcelデータを個別に処理したい場合 | 5 |
| YouTubeダウンロードツール | YouTube動画をダウンロード | オフラインでYouTube動画を視聴したい場合 | 2 |
| 画像背景切り抜きツール | 画像から背景を自動的に切り抜く | 商品画像やプロフィール写真の背景を削除したい場合 | 2 |
| CSV仕分けツール | CSVデータを特定の条件で分類して別ファイルに仕分け | 条件に基づいてデータを整理・仕分けしたい場合 | 3 |
| 画像色合い調整ツール | 画像の色合いを自動的に調整 | 画像の見栄えを改善するために色合いを調整したい場合 | 3 |
| メール自動送信ツール | 指定の条件でメールを自動送信 | 定期連絡や通知を自動化したい場合 | 4 |
| PDF結合ツール | 複数のPDFを結合する | PDFを分割し、回転したり不要なページを削除したい場合 | 4 |
| PDF分割ツール | １つのPDFをページ単位に分割する | 複数のPDFを1つのPDFに結合したい場合 | 4 |
| フォルダコピーツール | フォルダとその中身をコピー | データバックアップやフォルダ構造を複製したい場合 | 6 |
| ファイル名の一括変更ツール | 複数のファイル名を一括で変更 | 大量のファイル名を効率的に変更したい場合 | 6 |
| 動画⇔画像変換ツール | 動画→画像＋音声を抽出、画像＋音声⇒動画を作成 | 動画を画像＋音声に分解、画像処理後に動画に戻したい場合 | 6 |
| 動画音声入れ替えツール | 動画の音声を、別の音声で入れ替えする | 質の良い動画と音声を組み合わせたり、BGMを置き換えたい場合 | 6 |
| 動画分割・結合ツール | 動画の指定範囲の切り出し、複数動画の結合を行う | 動画の一部を切り出し、１つの動画にまとめたい場合 | 6 |
| 動画の超解像化ツール | 解像度が低い動画をAIによって高解像度化する | 古いビデオカメラの動画の画質を向上させたい場合 | 6 |
| コード変換ツール | 文字コード、改行コードの変換 | 文字コードや改行コードを指定したものに変換したい場合 | 7 |
| OCRツール | 画像やPDFからテキストを抽出 | 紙資料やスキャンデータをテキスト化したい場合 | 7 |
まとめ
本ブログのも目的は、Pythonを使った実用ツールを自作できるようにサポートすることです。
とはいえ、全く知識がない方に説明するのは難しいため、次の方を対象にしています。
- 基本的なWindowsの操作ができる
- コマンドプロンプトからコマンドが実行できる
- Pythonの基本文法について、ある程度理解している
そして、本記事ではそのための最初の一歩として、次の内容を取り上げました。
- 自作ツール開発・実行環境の作り方
- 自作ツールの作り方
- 修正しやすい自作ツール作成ポイント
- 本ブログで紹介する自作ツール一覧
各記事で紹介する自作ツールは、読者のプログラミングの勉強材料となること、読者自身の用途に合わせたカスタマイズがしやすいことを心がけ、プログラムの読みやすさに重点を置きながら、ある程度使えるレベルのものをソースコードと簡単な解説付きで公開し行く予定です。
このブログが少しでも役立つと感じていただけたら幸いです。